停めていたバトンを

http://d.hatena.ne.jp/usui_soup/20040619#p1の続き。

id:yms-zunさんから頂いた「巨大建築しりとりの「CG的にイカス建築とは何か」というお題。
という事で、考えてみた。


んですが、CGとしての建築ってば、

  • CGプレゼン、シュミレーション
  • 実写映画
  • ゲーム
  • アニメ

っていうジャンルに存在していて、それぞれちょっとばかり性質が違う、と。
その中で、「巨大建築」の言葉のニュアンスを考えると、60年代万博に代表される「明るい未来」を指し示していた現代建築、80年代の泡沫経済を背景に日本企業の消費欲と外国人(一部日本人)建築家の創作欲*1の、欲望のアマルガムたる「バブル(デガダン)建築」、あるいは「意匠」よりも本四架橋のスケールの構築物でさえミリ単位の施工精度で作り上げる「生活に密着したオーバーテクノロジー」たる日本の土木建築、などが放つ、ある「におい」指し示すのではないかと思うのです。

という訳で、「実写映画、ゲーム、アニメに出てくるCG建築」を取り上げるのが妥当ではないかと。しかしながら、これらのジャンルに出現する建築を人に語るほど私は、映画、ゲーム、アニメに関して研鑽を積んでいない。なので、「目に付いて範囲で」お話しすることになる事をあらかじめお断りしておき、もし「いや、それを言うんだったらこんなのすごいよ」ってものがあれば、見識を深めるためにも、コメント頂ければ幸いです。

以下、思いついた順で列挙。


トロン
フルCG、、、では無いんですね。一部フルCG。記憶があいまいだけど、冒頭の電子の世界にダイブするシーン、好きだなぁ。でも、「建築」というより「空間」ですね。「トラウマ」レベルまでは行ってない。ライトサイクル、タンクの造形は「トラウマ」ですね。ミード先生、万歳!


ダークシティ
グニョグニョ成長、変態する建築物が秀逸。しかも、その様式をも時代が進むと同じくして現代へと進んでいくのがナカナカに憎い。製作過程を想像すると、「どう作ったのかワカンネー」部分もあり、CGオペレータとしては、ちょっと萎え(;・∀・)。しかし、デザインや空間そのもの感心させられたわけでは無く。


パニックルーム
実写かと思って何気なく見ていると、「ヲイヲイそんなカメラワーク実写じゃできねーよ」なカットに繋がって、驚く、という。しかし、これもデザインそのもの感心させられたわけでは無く。


フィフスエレメント
CG未来都市の密度感に感心。でも、「今のNYとどう違うんかと」。これもデザイ…(ry


ザ・セル
「狂気」の世界を空間として実体化させた、そのデザインセンスに感心。しかし、実写合成の世界だし、どちらかというと「インテリア」だから、「CGで作り上げた建築、仮想空間」では無いよなぁ。


マイノリティ・レポート
フルCGで未来都市!今回のお題にぴったり!でも、そのデザインセンス、「未来」という物に対するビジョン、そしてカメラアングル(アニメで言うレイアウト)の甘さ!
ヌルヌルにヌルイでつよ( ´ー`)y-~~。ええ。


以上思いつくままに列挙しましたが、、建築を齧った事があって、CG製作者としてのキャリアを建築プレゼン用CGからスタートした私には、感心させられた、感動した「CG建築物」って、実は無かったりするんですね。

デザイン、デザインコンセプト、「未来」に対するビジョンという点で、インパクトを受けた「仮想建築」って、「2001年宇宙の旅」「ブレードランナー」以降*2、出てきてないと思うんですよ。「トラウマ」レベルまで行ってない。これは、その後の「仮想建築」のパクリ元がすべてこの2作品、「明るい未来」と「暗い未来」に集約される*3と言っていいからなんですね。で、この2作品は「非CG」な訳で。


ところで現実の建築物は、建設されれば、疑いようも無くそこに存在するものなのですが、CG建築物には、ちょっと違う側面があります。
それは、カメラという物が存在しないと、CG建築物は単なる「座標データ」でしかない、という事です。視点を設定するという行為を、意識的にしないと、存在すらしない、そんなものだと思うのです。


で、CGでイカすカットを作るのは、とても難しい、と思うんですね。
というのも、「カメラを置くという行為に、リアリティが無い」からだと思うんです。僕は休日にカメラを持って、都市を撮るのが趣味なんですが、そのとき、カメラを構えてズームを微調整したり、中腰、しゃがんだり、片足を一歩ずらしてみたり。そうやって「フレーム」を調整する訳です。これは、とくに風景を撮るときによく使われる広角レンズを使用している場合は重要なんです。ちょっとした視点の違い、角度の違いで、フレーム内の見え方が大幅に変わりますから。

で、CGでカメラを置く際、実物のカメラを構えるときにみたいに、片足をずらす、膝を曲げてみる、に相当するシビアさ(現実では意識にも上らないほど自然にしている行為なのですが)で、CGカメラを置いているか?おまいは。と、スウプは、仕事をするときに、よく自問自答しています。

セットであれ、ロケであれ、キューブリックが、リドリー・スコットがカメラを置くときに、何気なく置く事なんて無い、と思うんです。センチ単位、1度単位でカメラの台座を調整したと思うんです。*4

僕は例えばマイノリティリポートの都市のCGカットに、あざといカメラアングルを感じることはあっても、「2001年宇宙の旅」「ブレードランナー」での、(今日では当たり前のものになってしまったけれど)緊張感に満ちたカメラのフレーミングを見出すことができないんです。それは、上記に述べたような「カメラを置く行為」がCGにとって宿命的なものであるにもかかわらす、その行為に身体的リアリティが無いゆえに「詰め」を行う事が難しい、からではないのか、と一人、愚考しているわけです。

だから、私がダメダメの評価を下したマイノリティレポートのCG都市には、発見されていない「イカす建築CG」を生み出す「極めて限られた視点」があるのかもしれないですね。*5

逆にあなたが自身の身体を使って(^_^;)、「巨大建築」をみるとき、「視点をどこに置くか」について考えてみたりすると、対象の「新しいカッコよさ」が発見できるかもしれません。


と、バトンを受け取った部分についてはここまで。私には「巨大建築愛好会」内でネット内、外ともに知り合いは居ませんので、キーワードのリンクをたどって、id:dicemanさん、面識も無く、いきなりで申し訳ないのですが、バトンをお渡ししたいと思います。企画の内容と経緯の把握は発案者id:yuuotokoさんのまとめ(http://d.hatena.ne.jp/yuuotoko/searchdiary?word=%2a%5bsiri%5d)をご参照ください。

お題は、「テレビ、映画で出てきたあのイカス建築って、あそこだよね」で。難しすぎれば、お知らせください。変更いたします。


次回は「CGとしてのイノセンス」にも掛けて、アニメ方面の作品で、

をネタに「イカすCG建築」はどうなのよ、でお送りしたい所存。

*1:ヨーロッパで仕事をする限り「歴史」に一部、押し殺され続ける

*2:これに「THX1139」を入れてもいい。だけど「建築物」というより「空間」がイカす、って感じなので選外。「スターウォーズ」は「2001年」が教科書になっているのでこれも選外

*3:と、とある建築の先生も言っていた

*4:や、そんなこと無かったりするよ、と、現場をご存知の方、ご一報を(笑)

*5:と言いつつ、ハリウッドのことだから、多分マットペイント併用でカット制作していると思うから、何処でもカメラを置ける訳ではないかも知れません