ネガドンを


観てきた。
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「個人で作品作り」というカテゴリに入る作品。
近年では「ほしのこえ」と同じようなジャンルかと。ただし、アニメでなく特撮映画ですけど。


全体としての感想としては、同じ3DCGをやる人間としては、
一言、「おめでとう」と。
ほぼ一人で、「自分の」作品を2年半の時間を掛けて作り切った事に、素直に敬意を表したいと思う。
お話を考え、演出をし、全てのカットの制作を手掛けるのは、途方も無い作業量なんです。よくも、途中で折れずに、作りきった事だな、と。
ほんとにスバラシイ。


立ち見どころか通路まで観客で埋まった、超満員の会場の舞台挨拶で、ゲストのアニメ評論家の氷川氏が、「自分も歳がいって、自由になる時間が増えたから、こういう作品を作ってみたい。」なんて事言ってましたが、制作業を舐めちゃいけません。
上映前のトークの中でも出てきてたけど、99.9%、アマチュアがよく陥る「予告編作って、続かなくなって終わり」ってのがせいぜいだと思う。
それこそ、こういう作品作りって、30歳前後の体力、技術、気合の全てを注ぎ込み、「このまま出来上がらないんじゃないか」という恐怖と戦いながら、しかし、会社も辞めたし後が無い、って状況で作るもんだと思うんだ。
また、だからこそ完成まで漕ぎ着ける、と。
また、世間には出て来ないけど、完成まで行けなかった人間だって、結構いる筈で。


で、まあ、そんな訳で漏れ様としては、素直に「おめでとう」という感想なんですね。


でも、制作者としての自分とか、一人で作ったとかのバックグラウンドとか、全て無しで1本の作品としては、いろいろ言いたいところはあるんですね。一寸そこを以下に書いてみようかと。

ちょっと立場的に、作品の売りがどっち付かずだな、難しいスタンスの作品だなと。
怪獣映画へのオマージュとしては、「お約束」とか「ツボ」を突くのが中途半端だな、と。
でも、オマージュしまくりでは、単なる「同人作品」になってしまう訳で。
ではオリジナルか、というと「オリジナル度」が足りないなぁ、と。
つまり、オリジナルで押すには「お約束」を入れすぎだし、「オマージュ」が抜けていってしまう、と。
一人の作家の作品としては、ああいうネタは、どんな味付けにするか難しいと思う。また、難しいが故に、ああいう感じになったんだろうな、と。


ところで、
作品を形作るものとしては、脚本、演出、「画」、演出に入れてもいいかもしれないけど編集*1、があると思うんです。


で、
ネガドンを見てて漏れ様が評価したいのは演出で。
手堅い、まっとうに出来てるな、と。
カットの繋ぎ方、所謂「余計なカット」とかも、工夫とかが見られて。
編集のタイミングも、ちゃんと出来てるなぁ、と。
逆に、(色々な事情があっての事だろうけど)第1作を除くホンチャンのゴジラシリーズの、演出とか編集のイケテ無さ加減を考えると、プロの作品よりも、ずっとまっとうな「エンタテイメント作品」としての演出、編集が出来てるんじゃないかな、と思いました。


ただ、
脚本に大きな欠点があるなぁ、と。
自分が、見ているときに、取り敢えず気になったのは2点。
主人公がロボットに乗る動機付けが、作品を見る限りは、希薄に感じられる事。
もっと明快で強い動機付けを画面上に表現して欲しい。それが無いので、のめり込み度が足りなかったです。
まぁ、男子が巨大ロボットに乗る、って、アニメ作品を含め、勘所というか、名作が数多くあるハードルの高い部分ではあるとは思うんですけどね。
でも、そこを何とかしてこそ、「作品」だろう、と。


2点目は、もっとおいしく出来るのに、だた出てきてるだけのキャラクターが勿体無いなぁ、と。
主人公の娘と元部下がもっと使いようがあるだろうに、と。
娘の方は、きちんと表現しようと思うと、尺的にとか演出的に急にハードルが上ってしまうんだけど、せっかくの作品なんだし。
元部下については「なんで、こんな風にしなかったんだろう」と上映を観ながら思った程で。


次に、
「画」については、さすが本職だけあって、一点を除いて言う事は無いなぁ、と。
見ごたえのある「町並みのCG」。作り込み大変だったんじゃないかなぁ、と。
煙類。ボリュールレンダリングにせよ、2Dにせよ、豪華だなぁと。
壊れ物。動き、破片の大きさ、良い感じだな、気にならなかったな、と。
ヒーローロボ。ロケット噴射とか、テクスチャとか出来良いです。怪獣もね。
「一点」ついては、一応、(自分ごときとはレベルが違うにせよ)同業者であったりしますので、ちと言えない。


最後に、全体としては「これぞ!」という部分が欲しかった。
自分が「ほしのこえ」を初めて見たときは「衝撃」を受けたんです。
それは何かというと、あの作品の「世界」を決定付け、また、所謂「プロのレベル」以上の出来の「背景」だったんですね。いまでも、あんな風に作品世界とリンクした、情感のある「背景」は出てきていないんじゃないかと。
「これぞ新海作品」というか。*2
でも、それを言うと最初に挙げた「オリジナル/オマージュ」とか、作品の(あまり使いたくない言葉ざけど)コンセプトが、という話になる訳で。


でも、そこまで行っちゃうと、
「いや、『作った、みんなに見てもらった、嬉しかった、面白かった。』でいいんちゃうの、難しい事言わんと。」
とは思うんですね…。


とりあえず、こんな事を、上映後に入ったコーヒーショップでカフェラテを啜りながら思いました。


色々言ったけど、「漏れ様も、なんか作るぞっ!」とこの作品からエネルギーをもらったのは確実であります、ハイ。

*1:演出、編集が明確に別パートとして存在する実写作品はこの限りではありません

*2:いや、ガイナックス作品とかの影響とかは見てとれる事は知ってますけど