昨日の

続きを書いた。
まぁ、すごい乱暴な言い方すると「ウルトラヴァイオレット」は「キャシャーン」のハリウッド版なん違うかなと。
監督が「こういうの作りたいんじゃぁ!」っていう欲望だけで突っ走って、エンタテイメントの基本から外れてしまってる、と。


いや、単に印象で語ってんので、「トンデモ」扱いしてOKな話ですが。

まず、脚本が、もう、映画というエンターテイメントの条件を満たしていないんだな。


ヒロインの心の動きのベクトルがコロコロ変わるんだな。またお話の「要素」も多すぎる。
映画作品なら、登場人物の心のってーかモチベーションのベクトルって、変わるとしても1回がいい所ではないかな。2回はほんとに難しいと思う。
で、コロコロ変わるから客はヒロインがとんでもなく気まぐれ、もしくは多重人格にしかみえない、つまり「付いていけない」と。お客をヒロイン/ヒーローと同じ心の動きをさせるのは結構手間と時間が掛かると思うんだ。


好意的に解釈すると。
ヒロインの暗殺者としての側面と過去に我が子を失った母性の側面の「揺れ」を書きたかったんじゃないかと思う。
でも、そんな心の揺れを「ハコ書き」で表現しようとするからカットとかキャラクターの立ち位置がご都合主義的に変わっていく感じに見えるんだな。そういうのって、仕草とか表情、もしくは「ハコ書き」自体を「アンビバレント」なネタにしないと収まんないよね、と。


で、そうやってお話の要素っていうか「ハコ書き」が多過ぎるのに伴って、場面転換が多過ぎ/唐突すぎるのでヒロイン達が瞬間移動するような見え方もしてしまう、と。


あとね、どうしようもなく「ガンカタ*1を見せようとしてるだろ、おまいは、と。
脚本をきっちり仕上げてみたら「ガンカタ」がどこにも入ってなくて困ったから、一部話を変えてガンカタ・アクションを挟む事にした、ってなら分かるけど、「ガンカタ」ばんばん入れて書きました、ってのは映画としての失敗の第一歩なん違うか、と。
結果、ガンカタシーン多過ぎ、もしくは、あの長さでいくならアクションのネタが少ないよ、と。おまけにクライマックス前に「ガンカタ」挟むタイミング間違えてるし。一歩譲って、あのタイミングなら、レイアウトってーかストーリーボード間違えてるよ。


ただ、あのケレン味たっぷりのガンカタ自体は今作品でも健在。格闘シーンは楽しめましたよ。いや、あの漫画っぽさが良いんですってば!


監督が脚本も書いているんだけど、漏れ様、そういう兼務はよっぽど才能が無いと無理がある、と思ってるんだな。ていうのも「真摯な」脚本家は24時間365日「良いホン」ついて考えていると思うんだ。「真摯な」監督も然り。で、そういうフルタイムの脚本家、監督にかなうのか、と。いや、監督が脚本に関心を持つとか、逆に脚本家が監督業を意識するのは悪くはないと思うけど、兼務してしまうと「細かい所」とか「深み」の面で不利になると思うんだな。平均的なデキと傑作との間に大きく立ちはだかる「もう一歩」とか「最後の10%」とかで踏ん張れるんだろうか、と思ってしまうんだな。


前作の「リベリオン」は世界観というか基本的なアイデアは「THX1138」を借りているんだな。*2で、B級臭漂いつつも「おお、結構面白いじゃん」って事になった、と。
で、今作はオリジナル書いてみたんだけど、荷が重かったんだなぁ、と。*3




で、演出なんだけどね。
まぁ、アラだらけ、というか。
上で述べたように、場面転換が唐突すぎ。雑な仕事だなぁ、と。
同じシーンなのにヒロインの演技というか、キャラクターの感情のレベルが繋がっていなかったりとか。単純にカット繋がってないというか「なに、それ脳内補完を期待しているって訳?」と言ってみたくなる様な。*4



次、編集か。
上と同じ様な事言うけど、繋がってない所が多過ぎ。てか、もし、「こんだけ全部入れろや、(゚Д゚ )ゴルァ」みたいな状況ならどうしょうも無いですが、ほんとなら、もっとバサバサ切ってシンプルなお話にしてでも、「繋ぎ」の部分を丁寧に仕上げるべきだよね。
でね、後でも書くけど、スタッフロール見ると編集はどうも香港でやってる感じがするのな。なんかこの繋がって無さ加減というか、編集の洗練されて無さ加減って初期の香港アクション映画っぽさを感じてしまうのは漏れ様の気のせいだろうか。




あとCG。
てかね、セットデザインからしてイケてないんですね。CGもセットデザインもディテールが全然足りてないんだな。セットはデザインの「その形である理由」が無い感じで。CGは「リアリティ」を出すのに必要なディテールがの作りこみレベルに達してないんですな。


CGもなぁ。
CGとして「勝算のない」演出で使われてたり。建物の足元まで入るレイアウトというかカメラアングルで、街ひとつをCGIで作るって、大変なんだな。てか、CG一発で作ってるっぽいのが低予算っぽいというかアマチュアっぽいなぁ、と。カメラがスゲー長い距離トラックするとかの動きに耐えるCGIってハリウッドクラスで、それなりの手法でないと無理なんじゃないの、と。


ハリウッドクラス、って書いたけど、どうもCGIも香港系みたいなんだな。
スタッフロール見たとき漏れ様「ん?」って思ったのな。上から順に
メンフォンド
ISE*5
中国ナントカ社
みたいな名前で。
いや、香港系だから、って事じゃないんだけども、例えば「StarWarsの次回作のCGIはすべて日本のCGプロダクションで」なんて話聞いたら「なんかのガセじゃないの」って思うし。やっぱりそれなりの体制、環境があるからハリウッドクラスのCGIが出来たりするんで、デザイナーの能力がどうとか言っても始まらないのな。
で、もし、それを引っくり返すんだ、ってなら演出面とか撮影の段階で「勝算があるように」綿密に戦略、戦術を計画しておかないといかんと思うですよ。




てかね、俳優とプロデューサー・レベル以外は殆ど香港・中国系のスタッフで占められてるんですね、この作品。印象としてはsonypicturesだし、ハリウッド作品って感じですけど。
だから、そういうものだ、と見れば「まぁ、そんな出来なんだろうなぁ」と言う事なんじゃないかな、と。「ミラ・ジョボビッチ主演でSFXがウリのハリウッドの作品」って見てしまうから、期待もしてしまう、と。


いや、だからね、監督が「こういうのんを、ミラタソで作りたいんじゃぁ〜」って事で突っ走って脚本書いた、と。上海辺りをロケセットに使いたいし、コストも削減できるからセットもCGIも香港あたりで作ろう、と。こういう話が作りたい、って所から出発してるから、編集も出来るだけ切らない、と。*6




まぁ、そんな感じじゃないかと、漏れ様、邪推してるんですが。

*1:いや、この作品世界にガンカタは無い事は分かってますよ、エエ。

*2:クスリが鏡台の裏に置いてあるってのを見ても確実だと漏れ様は思ってるんだけど。

*3:「本作『ウルトラヴァイオレット』は、1980年に公開されたジーナ・ローランズ主演作『グロリア』をコミックブック・アクションアドベンチャーとして甦らせたいというカート・ウィマーの情熱からスタートしている。-公式ページから-

*4:子供を乗せて車をバックするカットとか、いきなり遊具のシーンに繋がる辺りとか。

*5:ここは詳細わかんないです。IMDbで見るとウルトラヴァイオレットしか担当していないみたい。

*6:15分ぐらい切っても、同レベルの話の繋がり具合の映画には出来る感じがするんだけども。