日本沈没@六本木ラフォーレ

という事で、私の使ってる3DCGソフトのセミナーが六本木であったので行ってきた。
日本沈没」のVFXメイキングを樋口監督やらVFXプロデューサーやら招いて話を聞く、と。


で、始まったんだけども、マイクの調整が出来ていないのかナニ行ってるのか殆ど聞こえねぇ(#゚Д゚) プンスコ!後半はどうにかなりましたが。


で、個々のカットはねぇ、まぁ驚くような事をしている訳でも無いし。当たり前の事だけど、それなりに丁寧に作ったんだなぁ、と。ま、ホントに凄い事新しい事をしたなら、日本のプロダクションなら秘密にするだろうしね。※訂正。というか、漏れ様みたいに現場の人間の立場では「おお、スゲー。あったまイイ!」とか思う事って、各デザイナーの「手技」に近い所にあるのな。だもんで、セミナーとかで聞く「大枠の」カット解説では「なるほど、自分も確かにそういうアプローチでするだろうな」ってな感じになってしまうんですね。だもんで、正しくは「セミナーのような場では、表に出てこない」という事かと。
爆発、煙などの実写素材撮りに1ヵ月半かけたとか、土の爆烈なんかは半年前から諸々の許可を取って発破用の火薬使った、とか。
あと、建物の倒壊など壊れ物は、セミナーで見たカットは手付けだったなぁ。CGでシュミレーションでやりがちな「粉々に壊れ」系は模型やらでやってるみたい。
ま、そんなトコかと。




でね、一番ビックリしたというか、おお凄いな、と思ったのは「DI」って言うワークフローで。
今まではVFXカットっていうと、その当該カットのみフィルムをスキャンしてCG合成やらコンポジットをしていたんだけども。
日本沈没」はフィルムで撮ったもので必要なフッテージはは全てデジタルにスキャンしてるのな。
で、編集やコンポジットやCGに廻す前に、全て繋げて、フィルムの段階で既にばらつきのある露出やら色味を揃えてしまう、と。ハイライトのトーン合わせとか簡単なコンポジットみたいな事もしてしまう、と。
そうやって、映画全体の色味を、作品の演出意図も汲み取った上で最初に揃えてしまうのな。


コレは何が良いかというと、後工程のCGやコンポジットでカットが色々な現場に分散したときに、CGやコンポジット作業中に、色味とかライティングとかを加える際に「合わせるべきターゲット」がはっきりしている、という事で。
いままでは、モニターの色味やらコントラストやらがバラバラな各現場で、コレも露出や色味がバラバラなフッテージを相手に「んー、こんな感じかな」とかやっていて、いざフィルムに焼いて繋げると「うー、ガンマとか色味とかバラバラだぁ」ってな事が起こっていて、やれこのカットは色をどうしろとかリテイクが来ても「じゃ、どのくらい?」ってのも「こんな感じ…」とかね。
という訳で、最初に実写フッテージの色味を統一しておくと、後工程のCGやコンポジットの色味のバラつきが少なくなるんですね。
で、最後の仕上げで、更にCG、コンポジット、実写カットを全部繋げて、DLPで大スクリーン上に映しながら、リアルタイムに色味を弄ったり、空の色を変えてみたり。
このときも、最初に色、明るさの統一をしているから調整がかなり楽、と。


それみてると、「うは、良いモノ出来るの当たり前じゃん」みたいな感想ですな、漏れ様としては。


おまけに今作品では、各VFXプロダクションのモニターを測色機使ってキャリブレーションしてるらしいんだよね。しかも、イマジカの技術者が各現場を廻ってやってたらしい。
昼に来て終電後まで掛かって、キャリブレーションしてた、とかの話ししてたなぁ。
で、そんなのアメリカのVFXプロダクション並じゃん、と。
つか、測色機ってのは漏れ様もとある現場で見たことあるんだけど。
でも技術者が付いてきてる訳じゃないし、借りてきた人もあんまり判ってないみたいで、結局、役に立たなかったなぁ、と。


て訳で、環境的には、日本映画としては「特異点」なのかな、と思う。
モニターのキャリブレーションにしたって、漏れ様みたいな現場レベルの人間でも「いや、こうすべきなんじゃないの?なんでやらないんだろうね。」と考える事は出来るんだよね。
でも、お金とか、あるいは各プロダクションの利害とかで、他の作品でも出来る訳じゃないんじゃないかなぁ、と思う。技術的には数年前から可能、でも運用面で不可能、みたいな。
まぁ、けど、それは、この映画のクランクアップは監督とVFXスタッフの3人だけで撮った「きな粉を降らして「空気に舞うほこり」を表現する為の実写素材」だった、って事があらわしているように、監督のVFXに対する執念というか気迫みたいなのが、そういう環境を形作る大きな要素になってるんじゃないかな、とは思いますね。