少し時間ができた。

んで、数日前、巡回先で取り上げられたタブレットPCについて。


http://d.hatena.ne.jp/yms-zun/20040428#1083154300
http://artifact-jp.com/mt/archives/200404/tabletpcgraphic.html


 MSが「バーティカル市場向けのビジネス用途PC」をメインターゲットに、「キーボード、マウスに拒否反応を示す初心者」をサブのターゲットに据えて*1タブレトPCを発表して1年強。あまり売り上げも捗々しくないとの(公然の)噂も聞きます。
 そんな中、なにやら、グラフィック向けの販促がかかってるみたいで。 
 ビジネスとホームユースというターゲット設定に「売り上げ」至上主義がほのかに透けて見えていたので、この度のMSの方針転換には「何を今更」と思ってしまう訳で。つーか、「タブレットが付いているPC」(コレについては後述)なのにグラフィックユースをメインターゲットにしていなかった方が不自然極まりない訳で。


グラフィクソフトとか新ドライバについては上記のサイトが詳しいので、スウプは、「スペックだけでは見えないタブレットPCを使う意味」について、少し。(これでよろしいでしょうかZUNさん(笑))



 あなたがタブレットPCが「必要だ!」な人なのか「イラネ」な人なのかは、PhotoShopやAliasScetchBookを使うまでもなく、実は、ペンを持ってウェブブラウジングするだけで判ってしまう、とスウプは思っている。

ダイレクト感である。*2

 一枚の板となったタブレットPCをひざの上に乗せ、ペンを持って、いつも行くサイトをブラウジングしてほしい。
 ペンを持ち、ブラウザをスクロールさせる。何か感じないだろうか。手書き入力より、グラフィックソフトよりも、私は、そこにタブレットPCの本質があると思う。

 手の動きとPCの挙動が1対1で対応する。この出来事に感じ入ることが出来るかどうかがタブレットPCに価値を見出せるかどうかに直接つながってくる。

 手書き入力でメモ帳にメールなどの下書きを「書いて」みる。手書き入力では、その入力形態と、文字の入力数がキーボードに比べて圧倒的に少ないことから、頭で文章を「考えながら書くこと」を強制される。スウプはキーボード入力で文章を書くとき、思いついた事をザクザク入力してしまい、後で「編集」して、読むことが出来る文章に整えるスタイル故、キーボードで文章を入力するのは「編集」作業を指すといってもいい位なので、「文章を書く作業」としては同じでも、頭の使い方がぜんぜん違う。ここには、自分の出力する文章に対しての姿勢が大きく異なざる得ないLook&Feelの差があるのだ。
 思いついたことを、付属の「付箋」ソフトに直接、フリーハンドで書き込む。「付箋」と言いつつ、残り枚数を気にすることなく*3、散らばって無くすこともない。地図とかをメモしていて、チョット狭いな、と思えばドラッグして書き込む面積を広げることができる。
 もちろん、ペンで画面上に直接、画を描き込み、いくらゴシゴシ消しても紙が荒れるわけでもないグラフィックソフトの使い味は、鉛筆と紙、PCと机置きのタブレットのそれとは全く異なり、心地よい。*4



 そんな訳で、スウプはタブレットPCってのはPC+タブレットでは無く、MacやWinやLinuxのうちの一つとしてのタブレットPCと考えている。言うまでも無く、GUIはWinだし、使えるアプリ、OSの構造、カーネル、全てWinである。何を寝ぼけたことを言っているのか、と、あなたは思うかもしれない。が、PC+タブレットと考えるには、その位、実際の使い心地が違うのだ。
 乱暴な例えをすると、データや画像をタブレットPCで扱うのは、映画「マイノリティ・レポート」でトム・クルーズが予知夢表示機をデータグローブで操るのに近いものであって、逆の言い方をすれば、既存のOSを積んだPCを操るのと、その位の隔たりががある、とスウプは思っている。*5



 以上に述べたように、タブレットPCを使う事には、既存OSのPCや、紙を扱う事と「質的」な相違があると思うのだ。
 そんなわけで、質的にWinマシンとは異なるタブレットPCをWinマシンと同じように使う、つまりWordやExelでビジネス書類バシバシ制作したり、Photoshopガリガリ画像処理したりする、のは、Linuxマシンをサーバ用途でなく、ビジネス書類制作に使ったり、Macを2Dワークでなく、バリバリの3Dワークに使ったりするのと同じ位「心地よくない使い方」だと、スウプは言いたい。
 したがって、タブレットPCとは、Winマシン+αを期待する人にとっては、「Winマシン以下」な存在でしかないはずで、Winマシンであることを期待する人には、1Kg前後で、バッテリーが6時間ぐらいもって、出張の際には新幹線でDVDまで見ることができる、そんなB5/ミニノートをお勧めしたい。
 ガンガン絵を描きます!って人にも、紙(笑)あるいはナナオの液晶UXGAモニタ+intuos2、もしくはCintiqをお勧めしたい。


 では、タブレットPCは、どんな人が使うべきなのか。
 私は、タブレットPCは、ソレに「Winマシン」でなく「何か新しいもの」を期待する人に、ぜひ使って頂きたい、と思う。
 私のss3500は当時の同スペックのノートPC に比べて明らかに高価で、バッテリーもそんなにもたないし、シンテックに比べれば液晶の質、視差は劣るだろうし、長時間ひざの上に置いてお絵かきするには重過ぎ*6る。だけど、私は、上記に記した、タブレットPCが持つ「何か新しいもの」故に、ほんとにいい買い物をしたと、今でも思っている。

 タブレットPCはそういう物だと、スウプは強く思っているのである。*7


 ほんとは、こういうタブレットPCみたいなマシンとOneNoteみたいなソフトはAppleが到達すべき領域だったと思っている。OneNoteみたいな情報、ドキュメントのコンテナ化は80年代後半のAppleが推進してモノにならなかった OpenDocその物だし、Look&feelはAppleが最も大切にしていた物の筈だ。90年代以降のAppleに無くなったもの、それがタブレットPCにはある、そんな風にスウプは思っている。*8



*1:タブレットPCが出て間もない頃、MSのタブレットPCに関するアンケートを募集しているサイトがあって、スウプも答えてみたんですが、職業だったか使用目的だったかが「グラフィック」ってだけで「そういう人達はアンケートの対象としておりません」てな感じで途中から進めなくなる作りになっていて、ユーザーとして愕然とした覚えが。

*2:月並みで申し訳ない。でも、本当にコレしかない、と思う。

*3:ソフトの仕様上、256枚までとか制限があるかもしれないけど

*4:紙で絵を描くのが巧みな人には、必ずしも心地良いモノでは無いと思っている。というのも、画をPC上で「いじくる」ことなく、狙ったものが紙に描ける人は、タブレットPC特有の視差や画面の小ささ、筆先と画面のわずかなレスポンスのズレが気になってしょうがないと思うから

*5:実際、オペレーションだけでなく、普段のデータの置き方、ソフトの立ち上げ方などデスクトップと変わってしまっている。

*6:「不可能」なわけではない。2時間、3時間となるとツライ、そういうレベル

*7:だから、購入当時、知り合いに「未来はここにある!」なんつーこっぱ恥ずかしい評価を述べたものだ。

*8:GUIの間抜けさ加減は(メニューがことごとくペンを持つ右手の下に隠れるとか、OutlookExpressで手書き入力の際漢字変換が効かないとか)当時のAppleが製品化していたら絶対あり得ないレベルではあるのだが(苦笑)