で、ですね

そんな訳で「イノセンス」のCGで気になっていた所も3度の視聴でほとんど確認できたかな、と。で、今更ながらですが、「CGとしてのイノセンス」を述べてみたいと思います。
そこで本日は、話を始める前に、ヘタレCGくりえいたぁ、である私、スウプのCGに対する判断基準を、一言述べておこうと思います。

というのも、「イノセンス」のCGについては辛い点を付ける、というか、「イノセンス」のCGがどうの、と言うより「アニメにおけるCGの到達点とその課題」を語る事になるのですが、色んな方の日記を見てもイノセンスのCGを「スゴイ」と評している方がいたりする訳で、場合によっては、こんな凄いCGに「なに小言を言ってるのか分からん」てな感じにもなるので。

よく映画の宣伝や雑誌の記事などで、CGを評する言葉として「何百台のマシンを動員して」とか「何百(千)万ポリゴンのデータで…」とかの決まり文句のような物があります。で、そういうのはスウプは「制作費ウン十億円」とかいうセールストークと変わりないと思ってます。

ヘタレといえ、一応3DCGでお金をもらって生活している人間にとって、そういう「データ量をいくら積み上げたか」という話は、実は好奇心を刺激しなかったりします。なぜなら、データ量は、そのカットの「ルックス」の良し悪しを決めることには直結しないからです。乱暴な言い方をすれば、「ほとんど関係がない」と言ってもいいと思ってます。*1むしろ、日々身近にCGに接してる者にとっては、普通に考えれば「ものすごいデータ量」を突っ込まなければならないところを、「予想だにしない方法論でカットの素材を作って」そのカットのクオリティを上げている、とか、「今までに例の無い、新しい視覚効果を実現する為に今までに無い使い方でCGが必要だった」という様な、新しい工夫、ひらめき、発想、緻密な戦略が、「おおすごい」もしくは「ああっ、ヤラレタ!」という驚きが私のような人間を惹きつけるわけです。

ので、一般の、CGを「眺める側」の人にはわかりにくい話であるかも知れませんが、ご容赦ください。

 また、「最低だ」「薄っぺらなCGがだめだ」「失敗している」「カコイイ」「カコワルイ」等々。そんな批判(批評でなく)は全く意味が無いと思っていますので、そういう印象と評価が直結した批判はしないつもりです。視聴者の価値基準のみで作品を語っても、私から見れば、「ああ、あなたの好みとは違う作品でしたね」という言葉しか出てこない訳ですから。星の数ほどタイプ、カテゴリーのある映画を俎上に載せて、監督の価値基準と己の価値基準が異なる事をあげつらってみても、そこから何も生まれないと思ってます。
作品としてのイノセンスについて書いたときもそうなのですが、私はテクニカルな問題として、「何故、そんな風に見えたのか」で、「アニメにおけるCGとして、その先に何があるのか」をお話しできれば、と思ってます。*2


以上を踏まえた上で、以下のトピックについてスウプの意見を晒してみたいと思います。

現在のところ、以下のような章立てで、数日間(仕事の進み具合によって数週間)に分けてUPできたらと思います。


■総論

■各論
1、キャラ(セル)がその世界(CG)に立てているか
○加速度の問題
FPSの違いの問題
○シミュレーションの問題

余談としてキャラとしてのCGと背景美術としてのCG

2、ズレがどの範囲に収まってるか。
○シェーディングの問題
○「正しいパース」の原画である必要性


3、魅力的な世界になっているか
○従来を1歩なり半歩超える絵になっているのか
○画角が窮屈に感じること
○中景が無いこと
○1本の線に勝てているのか?


4、狙った絵を見れる環境があるのか
○エフェクトのかけ具合

■結び

てことで。

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http://d.hatena.ne.jp/usui_soup/20040522#p3

につづく。

*1:そんな風に考えているので、スウプはアニメの制作体制、とくにレイアウト・システムに関心があるのです。欲しい画を完全に計画して、それを達成する、という制作姿勢は、3Dデータではあってもアニメと同じように、作品世界全てをゼロから構築しなければならないCG制作に大いに参考になると思ってます

*2:じゃあ、スウプの価値基準のみで「イノセンス」を評価したら、どんな物なの、といえば「んー、王道目指してないねぇ」といった所です