先週の佐藤琢磨のこと

(以下、暴虐無尽モードです。生業であるCGを語ったりするモードとは全く異なるのでご注意を)

5/31の文章を書いて、他のサイトなど見ることもなく1週間すごしてました。
で、今日、時間が空いたんでマッタリしながら色々巡回すると、多くの日記サイトで終盤の琢磨×バリチェロのクラッシュに関して、琢磨に対する非難がけっこう多いことにビックリ。
曰く、あそこで3位を確実にして、2位、1位とステップアップするべきだった、とか、若さが出た、とか、あれは駄目だろ、とか、レース後の口プロレスを指して態度が悪いとか、今回の結果をもって猛省すべきとか。

敢えて言わせてもらおう。

「オメーら何も分かっちゃいねぇ( ゜Д゜)y−~~」

や、私も、あのクラッシュは「琢磨がバリチェロの動きを読み違えた」という点で彼のミスだった、と思います。*1

けどさ、2位、1位とステップアップするべきだった、とか言ってもさ、レースなんて「この瞬間抜くか抜かないか」しか無いんだよ。BARがいつも今の速さを維持できるとは限らないし、次のレースではミシュランが駄目駄目かもしれないし*2、ドライバーがいくらがんばっても、それ以外の要因で力が発揮できないかもしれない、いや、発揮できない確率のほうが大きいんだよ。だから、「刺せるときは刺す」でなきゃいかんのです。明日も今日の延長線上にあるとか、一歩一歩とか、そんな世界ではないとおもうですよ。

今の琢磨には、ホンダ、BAR、ミシュランとそうそう無い、「狙える条件」にある訳ですから、だから、アレはあれでいいんですよ。


で、さらに言うと、琢磨のあのクラッシュは、「意志」の問題だと思うんですよ。

私もこの日記で、今までの琢磨の走りについては辛口の評価しか与えてません。乗ってはいけない縁石に乗った、とかね。それらのミスは、たいてい単独走行でスピンとか、縁石でボディ壊したとかなんです。意思とは関係ない、彼自身の問題、なんですね。

でも、この2、3戦は「彼自身の問題」は殆ど解決できたのではないかと思うんですね。
で、あのクラッシュは、琢磨の「俺はチャンピオンになりたい」という意思の発露なんですね。で、それを観客、ジャーナリスト、レースの中の人に表明した(ORできた)瞬間であったわけなんです。あそこで、守って3位でタイヤがたれて「がんばったねー、けど残念だったね」で終わるのでは全く違うと思うんです。*3「表彰台にのってどうの」なんて評価、争ってる本人たちにはちっとも興味が無いと思うんですよ。ほんとに自分の人生をかけて戦ってる奴は、2位、3位をなんてチャンピオンへの踏み台でしかないと思うんですね。オリンピック選手も言うじゃないですか、「金と銀じゃ天と地だ」とか。

で、琢磨はそういう意思表明ができたわけで、じゃあどうなるか。エンジニアは今まで以上に気合入れてマシン作るようになりますよ。琢磨のBARがミラーに映ったドライバーはちょっと緊張する事になりますよ。シューマッハ兄は今まで以上にギリギリの走りで予選アタックするだろうし、チーム首脳陣は本気でトップを取りに行く作戦を考えるし、ピットだってコンマ1秒を気にする様になるでしょう。

え、みんなプロだからそんな事普段から出来てる筈だって?そんな事無いと思いますよ。彼らだって人間な訳ですし、逆に「自分の何かを削って」仕事してる人って、対象が「削り甲斐がある」ものであるときに最高の物を発揮すると思うんですね。でなきゃ「削れません」て。*4

そういう「己の意思」でもってチームや他の人を動かしてチャンピオンたりえたのがアイルトン・セナ・ダシルヴァであり、ミヒャエル・シューマッハだと思うんですね。彼らだって決して「お行儀のいい」ドライバーではないんです。デビュー当時、そのドライビングスタイルについて*5賛否が分かれてた訳ですし。

だた、琢磨は、今回のような「ハプニング」はあと1、2回しか許されないと思うんです。
今回、海外でもこんなに賛否を巻き起こすくらい、みんなの心に火をつけた。で、次は運までも味方につけて、その心の火を結果に結び付けなければならない。あまり長いこと周り人も「削ってる」余裕も無いはずですし。だから漏れは短ければ3ヶ月以内に「削り甲斐のある」結果を出せるかどうかにかかっていると思います。
佐藤琢磨が「シューマッハを倒すやも知れぬドライバー」として確立するかどうかは。

*1:だけど、ドライビングが無謀だったとは思わない

*2:つーか今までBSに対してアドバンテージがあったとはなかなか思えない

*3:それこそ「今の」バリチェロな奴とカテゴライズされかねない

*4:漏れ様が働いてる業界もそうですな

*5:シューマッハ兄についてはいまだに!