琢磨ぁーっ

只今、ヨーロッパGP観終わりました。
やはり、以前スウプが日記に書いたように、琢磨の前にはそんなに高くはないけど、越えるのに難儀なハードルがあると思います。今日のGPで2位が取れなかったのは、ひとえに彼の判断ミス、だと、思うのです。

で、これを読んでいるあなた。これから私が彼の「失敗」についてコメントすると思うでしょ。
いいえ、そんなことしません。
確かに、レース後の記者会見でバリチェロが言ったように「急にエンジン音が聞こえた。彼はあそこで無理しなくとも、私を抜けたはずだ」と、その通りに私も思う。でも、(前後が編集されてるとはいえ)そのコメントをしている時のバリチェロの表情を見ただろうか。私には「困惑」の表情にみえた。
大体からして、あの状況では「無理にオーバーテイクをした」と、非難の声が上がっても、誰も疑問には思わない筈だ。それがだ、「やがて自分を抜けた筈」だって?いくら大人なフェラーリチームでも、そんな自虐的なコメントは、普通ありえないだろう。
私は、いま、非常に感動している。
全体の記者会見を見たい、というのはあるが、トップ3のコメントには「困惑」のニュアンスをスウプは嗅ぎ取ったのだけど、その印象が仮に正しいとして、どうして、そう感じたのか。
それは、琢磨が「本気で自分たちを狩りに来る」ドライバーとして認識されたからではないだろうか。2年前、危険な幅寄せでマクラーレンに抗議に行った小柄な東洋人は、適当にあしらわれるだけであった。しかし、今日の佐藤琢磨は、「隙あらば刺す」獰猛なファイターであって、周囲からもそう認識されたのではないか。
いままで、こんな「日本人ドライバー」この世にいただろうか。「にっぽんじん」ドライバーが、「あの」フェラーリバリチェロに、接触する直前のコーナーの入口で、「あんな」やる気満々の挙動を示して、半車身コーナーに車体をねじ込んで2位を取りに行くだろうか。そんな「闘志」を海外の場で海外の、そして実績から言って明らかに格上のドライバーに対して示した事があるだろうか。順位を「我慢の結果」得ていた日本人ドライバーはいたけど、「獲得しに」行ったドライバーは今まで見た事がない。
想像してみて欲しい。星野のカルソニックスカイラインのイン側に、バカっ速のルーキーがNSXの鼻先をねじ込むようなものである。日本のレースシーンではほとんどありえないでしょ。*1「日本人的に」速いドライバーでは起こり得ないことが、ここ2、3戦のF1GPでは起こっている、と私は思う。
というか、私は、ひょっとして若かりし頃のシューマッハやセナたるドライバーを見ているのではないかと、本気で思っている。
私は今日のレースで、琢磨がああいう戦いをして、そしてリタイアした事を、実は、心底うれしく思っている。ここでスマートにバリチェロを料理して2位、とか、やはりバリチェロは偉大だった、でもポディウムに立てたよね、の3位よりも良いものを観たと思っている。
琢磨の前には「超えるのが難しい」ハードルがある。でも、そのハードルは2年前や開幕戦辺りの「越えれなきゃF1ドライバーとしてヤバい」ものではなく、越える事が出来たなら、一人の「ザ・グレイト・ドライバー」が誕生するハードルだと思う。彼はこの2戦ほどで、そこまで進化したと思う。あと半年以内に越えれば、彼は間違いなく、その領域に踏み込むと思う。
そして、そのハードルは、決して高くはない、と思う。

*1:スウプの妄想では、そんな事したら、レース後に土屋圭一辺りから吊るし上げを食らって、下手すりゃ日本のレース界から抹殺である