「パプリカ」について

もう少し書いてみる。
というのも、色々見て回った他の方のダイアリーで、

  • エンディングは結構原作と違う
  • 粉川刑事の「お話」は、映画オリジナル

というのを見かけたので。いや、自分で原作読めばいいんですけどね。でも、それだとダイアリー書くまで時間経ってしまうしね。
何かしらについて言及するって、労力いるよなぁ。


で。
前回も言及したお話のテンポについて書くのですが。
映画オリジナル部分が結構多めなのなら、中盤からクライマックスに掛けてもっと勢いのあるものだったら良いのになぁ、と。


で、ラスト付近の「お話の筋」としては3本程ある、と。
「刑事の筋」
「悪役との対決の筋」
「ヒロインの筋」
と。


で、この映画の物語の本筋は「対決の筋」なのは明らか。
脇に構えるのが「ヒロインの筋」と「刑事の筋」と。
なかでも「ヒロインの筋」は「対決の筋」とかなり密接に絡むので「ヒロインの筋」が重要度では少し上だろうか。


で、物語って、物凄く乱暴に言うのなら、キャラクターの「(その物語での)勝利条件の提示」から「条件を克服して勝利する」までの過程を観客にドキドキワクワクさせて見せる、という事ではないかと。




その視点で見ると、「対決の筋」は物語の勢いがいかにも弱い。
まず「勝利条件」が分かり難い、し、勝利条件の提示が悪役をやっつける1、2分手前なんではないか。これでは、いくらなんでもクライマックスへの勢いを付けるには助走が短すぎる。唐突な印象になるな、と。
ひょっとして、自分が伏線を捕らえられてないだけなのだろうか?いや、そうとも思えないんだけどなぁ。


「ヒロインの筋」も唐突感が否めない。
ヒロインに対する複数の恋愛感情が絡みつつ物語が進行する*1(それゆえパプリカの魅力も強調される)のだけど、クライマックスでヒロインが出す解決というか「結論」ってのが「イキナリ」な感じがするのな。
後から考えると、劇中、ヒロインが唯一感情を露にする相手である、ニックネームで呼び掛けられる相手である、って事なんだけど、それでも伏線としてはチト不親切ではないですか、と。
警部、同僚の研究者、ヒロインの3者で筋が進行していたところに、いきなり乱入した感じが否めないなぁ、と。
また、いきなりなんで、「対決の筋」同様、勢いが弱いな、と。


「刑事の筋」
実はこの筋が一番丁寧に話が展開している気が。
ただ、一番丁寧に話が進むんだけど、キャラの立ち位置としてどうしてもメインに持ってきにくい。
つか、一番助走が長いから、勢いがある筋なのに、終盤、物語への係わり方が失速する感じが。
もっとオイシイ位置取りというか役回りが出来るんじゃないかなぁ、と。
また刑事自身の「勝利条件」は「自身の葛藤を認めること」と「犯人を検挙する」って事なんだけども、葛藤は乗り越えられているとして、犯人に発砲するために越えなければいけなかったハードルは何なのか。そこがチト不鮮明。
「自身の葛藤を乗り越えると、犯人に発砲出来るようになる」ってのもなぁ、唐突だなぁ、と。


とうい訳で、自分には、勢いのある話の筋が最後に失速し、他の助走期間の殆ど無い話の筋をムリヤリ加速させているような気がするんだな。




「刑事の筋」で押すならそれが一番順当。ただし、原作とはアナザーストーリーだろうな、と。
「対決の筋」なら、物語の中での「約束」というか「ルール」をもう少し明示して「勝利条件」をもっと早い段階で観客に示す、と。で、「千年女優」ばりに映像の勢いで見せ切ってしまう、とか。
「ヒロインの筋」なら彼女を取り巻く男性が3人である事を、最初から仕込んでおく、と。最初から3人物語に登場させても、最後にあの選択をする(つか、彼女の選択は最初から決まっているんだけど)のは十分意外だと思うんだよね。
なぜ、その選択をするか、も、もっと丁寧に書ければ面白いと思うし。



あと、本作とは関係のない話になるけど、お話を「葛藤を乗り越える」というか「葛藤を我が物にする」「葛藤と正面から向き合う」ってのをメインに持ってきてもいいよね、と。心理学の基礎的な話だし。
刑事とヒロインは葛藤に正面から向き合う事で、物語上での「解決」をえる。物語の悪役は葛藤に向き合わず、欲望のまま進んでいって、怪物になっていく、とか。


ん。いや、何いってんのか判んないですね。やめます、ハイ。


最後に、自分は「あー、『イノセンス』の影が…」とか思ってしまったのですが、他の方のダイアリー見てて、


��(゜∀゜)
林原めぐみ×「気持ち悪い」×ヒロイン巨大化」でエヴァかーっ!
と。なるほどねぇ、と。

*1:そりゃヒロインに「自分以外は誰も知らない自己」を曝け出すんだからね。