つづき

そう、まぁ、CGI合成でも見ただけじゃわかんないよね、ってカットはあるんですね、と。
んで、『ローレライ』なら機関室のCGIはなんでチョッとやソットじゃ分からないか、というと、まずそれは、カメラが現実的なカットである、ってのが一つ。もう一つは、背景も現実的な物、というかオブジェクトである、ってのが理由だろうなぁ、と。
カットのカメラが「ありえねー」って動き、例えば空飛んでたカメラが水中に突っ込んでそのまま深海まで潜ったりしたら、「あ、CGだ」って分かる訳で。CGIで作ってるのが巨大ロボットだったりすると、これも「うん、CGだ」って分かるよね、と。



頭っからCGIだと分るカットについては、目に不自由のない人なら、生活していて一日約16時間、365日絶えず目からインプットしている「見え具合」というか、現実の「らしさ」と、鼻っから比較する事になる訳だから、コレは厳しいよね、と。
つまりCGIだよ、という予備知識があるから、見るほうはハイライトの微妙な入り方とか、陰影の細かい付き具合とか、細部の動き方がらしいか、とか「粗探しモード」見てしまって、チョッとでも「らしくない」部分があると、即、「CGがチャチ」みたいな感想になってしまう、と。
だから、その手のカットって、モニタの色揃えるとかの微妙な所まで「詰め」をしないと「リアリティのあるVFXカット」は無理なんよね、と。



その点、機関室のカットは、カメラはFIXで俳優のバストアップなんで「実写らしい」フレーミング、背景にあるのはCGが得意な機械類の「硬いモノ」、照明は室内照明、煙が立ってたりするけどカメラFIXなんで実写素材が使えたりする、と。確かな腕のある人がキチンと制作すれば、まずバレないだろう、と。
また、コンポジットで被写界深度で軽くボケ入れてた筈だから、余計にバレないやね、と。
(と、記憶してるんだけど。DVD手元に無いんで確認まではしてないんですけどね)



そういう、余りにも当たり前過ぎて、だーれも気が付かないVFXカットって結構あると思うんだよね、ハリウッド作品とかでも。そして日本でも、きちんと戦略と戦術が揃ったら、まぁ、チョッとやソットじゃ判らんほど「リアル」なVFXは作れるんだよな、と。



だから「CGっぽい」ってのはVFXというかCGIそのものよりも、それ以前のコンテ段階の「カメラの動きにリアリティがあるか」そしてCGIで作るモノそのものが「有りそうな物」かどうかってのが大きいと思うんだよね。



自分自身は、カメラがあからさまに嘘っぽいカットなんかは余り見ていて楽しめない。てのも、上に書いて理由と同じで、ハナから映像を分析し始めてしまって「お仕事モード」に入ってしまうから。あ、やられた、凄いな、と純粋に楽しめるのは何気ないフレーミングから、徐々にVFXらしいカットに移行するようなものだなぁ、と。
例えば『パニックルーム』の前半で、主人公たちが住んでいる建物をフライスルーするカットがあるんだけど。少し記憶が曖昧なんだけど、たしかカット頭はステディカムっぽいカメラの動きで室内を進んでいったと思ったら、キッチンカウンターを潜った辺りで「あ。」と思って、続いて階段ホールを垂直に登っていくのを見て「やー、よく出来てるなぁ」って感じで素直にだまされる、と。そんな感じのヤツ、と。



けどまぁ、考えてみたらVFXというかCGIカットの評価ってなかなか難しいなぁ、と。
てのも、VFXが視聴者に対して「完全勝利」してるってのは、「誰にも(CGだと)バレていない」って状態だからなぁ、と。そもそもCGである事が気が付かれていない訳で、そんなカット「やーよく出来てる」なんて褒められる事はないんだよなぁ、と。




という訳でCGIのできそのもの以前に、カメラの動きが嘘臭いと、もうそれだけで「CGっぽくて」、それでもリアリティのあるVFXカットにするってのはハードルが高くなるよねぇ、という話なんだけど。
でも、映像作品には「今まで見た事の無いようなカメラの動き」のCGカットを作る方が魅力的で、かつ、CGを使う意味もある、っていう分野もある、と自分は思っていて。
それが何の分野なのかは、次にでも。