つづき3

こちらからの続きで。
CGIとかVFXってカメラの動きとかが自然でないと、それだけでリアルに仕上げるのは難しいよなぁ、って話がこれまでで。
でも、斬新なカメラワークとかが生きる映像分野ってあるよね、と。
それはアニメの分野*1だな、と自分は思っていて。




こん所あんましアニメとかは熱心に見ていなかったりするんだけど、CLANNADってアニメやってます(ました?)よね、と。で、たまたまテレビ点けてて、そのOPを見たんだけど、これの冒頭が面白いなぁ、と。*2


天気のいい日に菜の花畑(?)を少女が走っている、と。で、カメラは菜の花の高さスレスレを少女を追いかける感じで飛んでいく。じきカメラ加速して、少女を追い抜き上昇して、今度は併走しながら菜の花畑に落ちる、少女が走っている影を写す、って感じで、ほんの数秒のカットなんだけど。


全体としては、子供の頃の心象風景みたいな感じで魅力的って感じだな、と。
カメラは、実写の観点からは有り得ない、トリッキーな動きをしているんだけど、画がアニメって事であましリアルがどうの、って印象にはなんないよなぁ、と。むしろ、実写等での予備学習の無い、そういうカメラワークが良いんでないかな、と。




そこで思ったのが、画の抽象度が上がるほど、カメラの動きはトリッキーでもOKじゃないかな、と。むしろ、「見た事もないような」カメラで「新しい視覚体験」を獲得できて素晴らしいよね、と。
手描きだけど板野サーカスもそうよね、と。あれはロケット花火飛ばしながらバイクに乗るという遊びの視覚体験を下敷きにしてる訳だけど、実写じゃあんなカメラワーク出来ません、と。ましてや一般の人々の視覚体験の引き出しには無かったよね、と。でも、今じゃ所謂、名作というか「名カット」に文句無く加えられる訳で。
あと、こうも考えられるな。絵という情報量の少ない画面で勝負してる世界がアニメな訳で、そこでは「パースが正確にめくれていく」とか「硬い物がキッチリと回転できる」ってとこで十分リアル、に感じられる、と。つか、それだけじゃ「華がない」からわざとパース歪ましたりして誇張したりするよね、と。カメラだって、現実世界でありそうなカメラポジションなんて退屈、というかその位なら旧来の手描きアニメの文法、演出手法で十分だよね、と。



CLANNADのOPは、技術的には画面奥から菜の花が後ろに流れていく、ってのは手描きじゃかなり難しいでしょ、と。いや、一本一本しっかり原画、動画で菜の花描きます手なら出来るけど。影が流れ行く菜の花に落ちるって部分も、手描きじゃ菜の花を流線っていうのかな、シャッシャッとタッチ入れる処理しかできないよなぁ、と。



そんな訳で、あのOPのあのカットは、アニメに3DCGを使うって言う意味では効果的な使い方が出来ているな、と思ったんだよね。チョッと変わったカメラの動き、それを達成するには3DCGが必須、で、見た感じも良いよね、と。
そんな、アニメとかPVとか「リアルさ」を問われるよりか、映像表現のパンチ力というか、パッと見でオッと惹きつける事が大事な、そういう分野では「あー、こういうカメラの動き方って見たことないなぁ」とかの方がむしろ3DCGが生きるし、使ってる意味もある、と。






で、ココから先はチョッと話し変わるけど、自分は、「効果的」に3DCG使えているアニメ作品は、なかなか少いよな、と思ったりもしていて。
わざわざ3DCG使って演出的に意味があるんだろうか、とか、パースがめくれていってるだけでアニメ的には特別かもしれないけど、視覚体験としては3DCG使ってまで作る意味があったんだろうか、とか思ってしまうカット*3を結構よく見掛けるな、とか。



それは多分、コンテ切る段階で頭に浮かぶLOってのが、手描きと言う制約故に、ある程度決まってしまってるんだろうな、と。*4フツーにお話を繋げるだけなら、演出的には何も3DCG使わなくても旧来の手法だけで十分だしね、そんだけの蓄積がアニメの演出手法にはあると思うし。



そんな訳で、新しい視覚体験とか、そしてそれが演出と密接に絡んでいるとかのカットは、なかなか少ない感じが。
だからどうしても、3DCGの使い方がバンク的*5とか、手間的に無理*6とかをカバーする「省力化」な使い方が多くなるんだろうな、とか。
まぁ、そこら辺は仕方なくて、新しい視覚体験なんて、よほどそのカットなりシーンに拘りが無ければ、そこまで頭をキリキリ絞ったりはしないというか、その理由が無いし。



これは、自分の邪推だけども、たぶん、不幸なのは3DCG使う事だけ決まってる、だけど毎回出演のメカとかでもない、って感じのときだろうなぁ、と。コンテ切る人にしてみれば普通にコンテ切るだけで十分なんだけど、なんか3DCG使わないといけないから、取敢えず(手描きとしては贅沢な)パースがめくれるカットかな、となる、と。あるいは、ちょっと試しに3DCGでやってみたい、とか。3DCG作る方としても、結構手間なんだけど地味だし、みたいな。




いずれにせよ、当たり前の事だけど、だた3DCG入れたからって良いものが出来るわけでないし、いいもの作ろうと思うと、映像を考える人と3DCG作る人、ともに頭捻らないといけないよなぁ、と。で、そうして「カッコいいカット」を作れる事になったら、何より、その巡り合いの「幸運」に感謝すべきなんだろうな。
そんな風な事思ったりしています、と。

*1:あと、PVもそうだな。CG云々関係なく斬新な映像表現て暫く前までミュージッククリップの分野から出てくる、ってのが定番な状況だったしね

*2:つか、2、3回しか見たことないんだけど、この作品のOPって3DCG使用率って結構高いよなぁ。

*3:密着SLとマルチプレーンの中間の視点で、画面奥に向かって視点がドリーみたいな。

*4:あ、けど、ソレは実写も一緒か。カメラを物理的に置けるかどうか、って制限があるからね。

*5:毎回出てくる視点違いのBGやメカ

*6:例えば、去年の劇エヴァのモブとか武装ビルのぎょうさんの砲塔とか。まぁ、けど、これは「不可能を可能にする」方向が強いけど。