「パシフィック・リム」を

観てきた。

や、前回も書いたけど、なんか迷ったんだけどね。特撮・ロボットモノのオマージュ、って言われると「薄い」ヲタな自分はチョッと身構えてしまうんですよ。
自分は、一々原典を挙げられる程の「濃さ」でもないし、かと言って零細3DCG屋だったりもするんで観ないってのはドウなのよとか、色々あってね。


で、友人と2Dの字幕版を観てきたんだけど、や、良く出来てると思いましたよ、エエ。



なんつーか、マジンガーからエヴァ辺りまでのロボットモノとか、ゴジラとか、大体観てるよっていう人は「観ておくべきです」と言いたいな。
アニメとか特撮とか面白いと思った事ないんだよねーとか、完全にお客さん目線で観たりとかすると、色々言いたくなる事はあるかも知んないけど。


つかね、

「脚本がイマイチ」とかいう評もあるんだが。
まぁ、そういうのは「どこが、どんな風に」イマイチなのか大概書いてないんで、こちらも参考にしにくいんだけど。
けど、俺からすると、冒頭からメインタイトルが出るまでのシーンが、ひたすら主人公のoff台詞で作品世界の説明に終始する所から、「あ、これは、脚本の丁寧さをドウコウ言うような、そんな作品じゃないよね」と。*1
単純に、「オモシレー、ド迫力ぅ」みたいな、そういう作品だよ、と言うのを表してんじゃね?、と。


ただ、一つこれは残念だな、と思ったのが登場人物の一部台詞を日本語で言わせている演出なんだが、この台詞が「英語脚本の単語を対応する日本語に置き換えた」だけ、な感じがするんだな。
だから、日本語ネイティブな我々が聞くと唐突な感じがしたり、菊地凜子演じるマコの演技までも何かイマイチな印象さえ出てしまっていると感じた。
つか、マコの演技を見ていて、何かとても演じ難そうな感というか、無理やり台詞を挟まされている感、もっと言うと、編集が(表情や台詞の繋がりが悪くて)オカシイ感じまでしたんだな、自分は。
菊地さんて、元々は演技力で海外作品で注目された人なんで、それにしては何かチグハグな感じがしたんだよね。


その点、マコの幼少時の芦田愛菜ちゃんの演技はすごいし、その実力がスクリーンに現れていたな。
(翻訳の不味い)台詞を言う必要ない、演技のみのシーンだったのも奏効したのかも。


あ、あと演技ではペンコスト司令官も良かったですね。バストカットの多い、「寄り」の演技が多い登場だったけど、見応えあったと思います。

VFX

もう、私なんかに突っ込みを入れる余地なんかありません、エエ。
演出的にカメラを動かし過ぎだとか、ロボット動かし過ぎだとかの日本の「中の人」の評なんかも見かけましたが、自分はそれほど気にはなりませんでした。


同行の友人が、「ロングでロボットと怪獣がワンフレームに収まる、タメや見得のカット」が欲しかったと評しましたが、それは確かに「あったら嬉しい」。
自分はも少し尺の長いカットが所々挟まっていると良いかな、と思いましたが*2、贅沢言うなら、程度のものですね。
何れにせよ、「迫力満点」「見ていて疲れる」ほどのアクション、バトルなんで、文句なんて無しですよ。

以上の様に、

脚本の翻訳作業がイマイチだった事を除けば、俺的には文句付けようのない西洋「特撮」映画だったですよ、ハイ。


何がいいって、特撮やロボットアニメに大いにインスパイアされているとは言え、単純なオマージュや引用で「あ、このカットは○○作品のあのカットが元ネタ」といった、そういうものでなく、ちゃんと特撮やロボットアニメのエッセンスを消化した上で、作品に反映しているって事だな。


だから、観ていて、そのカットの影響元を思い浮かべることは、「薄い」ヲタな自分でも出来るんだけど、「ああ、こういう要素はアノ作品のアレ、またコノ作品のコレ、いやいや俺は見たことないナニナニな作品てのも有るらしい」みたいな、そういう感じなのよ。
だから「大好きなあのアニメのこのカットの丸パクで俺歓喜」みたいな、そういうのじゃ無いんだよね。


また、元ネタが単純に浮ぶような「安い仕事」をしていない、手抜きはしていない事は、この作品のガジェットである「ドリフト・システム」の物語での使い方とか、「kaijyu」の血液の設定とカットへの反映とか、そいういう所での「上手さ」にも現れていると思ったな。


や、だからね、ウェル・メイドだと思ったですよ、自分はね。
でさ、こういうデルトロ監督が、ロボットアニメや特撮の影響を公言して上で、それらのエッセンスを自分で消化して真摯に作品作りに向き合った本作な訳ですよ。*3
これまでのハリウッド作品での、アニメや特撮やゲームの「インスパイ『ヤ』作品」思い浮かべてごらんよ。ドラゴン何とかとか、ストリート何とかとかさ。
ソレを思えば、エンドタイトルでちゃんと日本の先人に仁義を切ってもいる本作品、クソヲタならいざ知らす「大人のヲタ」ならば、ちゃんと見に行け、と俺は言いたいな。

あ、そうそう、

ツイッターで某漫画家さん*4が言ってたけど、物語終盤における「エウレカ」の父と息子のキャラ配置は逆の方が、お話的にはスッキリすると、俺も思ったな。
つまり、腕を怪我してイェーガーに乗れなくなるのは息子にした方が良い感じが。
秀逸なので、せっかくなので某漫画家さんのツイートを引用しておこう。

パシフィックリムネタバレ注意/ギレルモ監督おしい!豪州組は親父でなく息子が怪我、それで綺麗に収まる。乗員は司令官と親父「フッ今のイェーガーはまるでオートマだな」「昔を思い出します」「一次冷却をタービンにブチ込め!」「その古い禁じ手で病んだのに懲りない人だ」「若造達に言うなよ我が友

Twitter / ikuto_yamashita

でさ、

自分はツイッターで特撮関係の監督とか「中の人」をウォッチしたりしているんだが。
見ていると、

試写会場に居た仕事仲間十数人とそのまま飲み屋へ!みんな言いたいことをぶちまけながら凄まじいテンションで盛り上がる。文句ばかりなのにみんな一様に嬉しそう。なんだろうこの中2感。〜(略

とか、

略)〜「こんなシーンをやれたら面白いに決まってるじゃないか」という気持ちが 〜(略

とか。


ちょっと、そのー。
まぁ、俺はこういう立場の人に「なれなかった」、そいういう零細3DCG屋、だったりするんだけどさ。
ああいう、ウェルメイド、見方を変えたら「安易なツッコミは許さん」そういう良い仕事を見せ付けられて、なんでこんな反応なんだろう、なんて思ってしまうんだな。


俺がこれ等の人のような立場であんな作品見せられたら、ヤラレちまった〜、ってなもんで、俯いてうなだれてしまうような、そんな気がするからなんだな。


正直、特撮展の巨神兵のメイキング見ても思ってた事なんだけどさ、ネットとかで海外の(CGに限らず)VFXメイキングやVFXの実験とかのムービーなんか見ているとリアリティを上げるにはどうしたら良いか、の一念でどんどん進化して行ってる風に見えるんだけどなぁ、と。
そこら辺、日本は技術とか段取りとか、進化して行ってるんだろうか、と。

*1:台詞をダラダラ喋って状況説明、なんていう、脚本的に「禄でもない」筈のやり口をあえてしているから。

*2:例えば、冒頭の戦いに負けて雪の海岸に生還するカットなんかはイェーガーが画面に見えてこない尺があってもいいんじゃないかな、とか。

*3:ただし、台詞の翻訳と演技での運用を除く。

*4:山下いくと氏