ルマン2015 -その2-

で、今年はポルシェのワンツー・フィニッシュで終わった訳だけど。


むぅ、ポルシェが強かったというのはその通りだけど、自分としては「あのアウディが」「あのヨーストが」ポルシェに追い縋るうちに、終盤にはボディをガムテで補強したりーの、9号車はハイブリッド周りにトラブルを抱えたりーの、「ズダボロ」にさせられていたのが衝撃的。
ポルシェのペースに「引き摺り回され」た、って感じだったよなぁ。
「あの」アウディが引き摺り回されるなんて…。




レース結果については、ポルシェが設定していた「今のレギュレーションなら、こういう設計で、ここまでタイムを出せる」という見切りというか、目標レベルが一番高くて、尚且つソレを実現する「詰め」がよく出来ていたという事なんじゃないかな。
アウディは1周で2秒ほど設定が甘かったので、本戦では無理をせざる得ず、ここ数年ではお目に掛かった事が無い様な、終盤に「細かい所が壊れてくる」事態に陥ったのだなぁ。



トヨタは更に想定が甘くて、予選タイムでさえ2ワークスのレースペースには敵わなかったと。昨年の車のネガ潰し*1をして、『レースモードでのラップタイムを1秒短縮』で戦えるだろうと思っていたら、大まかに1周で4、5秒落ちで勝負に絡めなかった、と。


まぁ、けど、きつい事書くみたいだけど、近年のモータースポーツにおけるワークスの戦いって、正常進化とかでは「ヌルい」というのはほぼ当たり前になっていると思うんだよね。
F1なんか見ていてもそうじゃないかなぁ。
設計段階で詰めに詰めて、シリーズ第一戦でおおよその序列は決まってしまう。第一戦でドッグファイト出来たならシーズンの開発を通して、上に行ったり下に行ったり出来るけど、勝敗に絡めないほど離れた位置関係なら逆転の可能性はほぼ無い、みたいな。
だからやっぱり、トヨタの首脳陣は、2014年のトヨタを見た他チームが設定するであろうターゲットを、見くびっていたんではないかな。



んで、ニッサン
や、まぁ、あの3台は勝負というよりも、「新技術へのチャレンジ」だとか「GTアカデミーの『ドライブ・シムあがり』の若者を起用する」だとか、何か新しいことをする、そういう企業姿勢のアピールがメインになっているのは明白なんで、アレはあれで良いんですよ。企業キャッチも『Innovation that excites 今までなかったワクワクを。』なんだし。


けどなんか、日本のSNSやら、スカパーに出てた長谷見さんとか、俺は見ていないけど地上波では散々の評価みたいだけどなー。


つか、そもそもさ、FFっつー「前輪を積極的に使う現代の耐久マシン」として理屈は判るけど誰も試していないレイアウト、しかも第一戦、二戦に出てなくてルマンが初戦になってる時点で、「そういうもん」でしょ。
本気で勝負をするなら、パワーユニットのコンフィグは色々工夫してみるにせよミッドシップのマシンで、タイヤもライバルと揃えて、3台のドライバーも全員プロで揃えて、かつ全戦に参加してデータを取る、くらいするのが最低ラインでしょ。


(追記:ミッドシップ云々が「速い」から、そういったチーム構成にすべき、と俺は言ってる訳じゃない。俺が言いたいのは、勝負ってのは「他チームとの差」が序列を決める訳だから、差別化する部分は「効果が最大になる」かつ「要素としては最小」にしてリソースを全力で注入すべきで、この場合は「パワーユニット廻り」だと。他の要素(レイアウト、タイヤ、空力、ドライバー等)は大幅にトレンドから外れたり、ましてや奇を衒う様な技術は波乱要因にしかならんから、ならば、それらはライバル勢と合わせていく(違いが無ければ負ける事も無い)という事。)


そこら辺を無視してネットの有象無象がとやかく言うのは(口汚いのは何とかならんかと思うが)まだしも、業界の「中の人」までも、無様でコメントしたく無いだとかナンだとか言うのはどうなのよ、と。
何でFFなのか、とか、そういうのを一般人にもわかりやすく解説してみるのがアンタ等の役目なん違うのか、と。
なんか、「アメリカに開発費落としやがって、俺等にやらせろやブツブツ…。」みたいな本音が有るんでは無いかと邪推してしまいますな。


ま、けど、3台出してくるのは如何なものか、とは俺も思うんだけどね。
3台出すってのは本気で勝負します、ってサインだと思うのよね。ソレが証拠に前年までのデルタ・ウィングとかZEOD RCは1台で参戦している(まぁ、そもそもカテゴリーも違うし)しね。
てな訳で、1台とは言わないけど、2台までで参戦するのが良かったんじゃないのかなぁ。現場のメカニックにも出来上がって無さ加減で負担が掛かっていたみたいだし。データ取るにしても、3台じゃなくて2台の方が現場の負担が軽くてむしろやり易かったんじゃないかとすら妄想してしまうんだけどね。
あるいは、いっその事「Garage 56枠」を継続して、ウィークポイントである前輪の大径化・ブレーキディスクの大径化のみを行って出場しても良かったんじゃないかな。で、ガチにラップタイムだけはLMP1とタメを張って、でもミッションやらがもたなくて本戦はリタイア、みたいな。
様はプロモを、本気寄りに運営してみたんだけど、プロモ/本気のバランス取りが悪かった感じがね、するのよね。


つか、ニッサンには来年も同じFFコンセプトで再挑戦して欲しいな、俺は。
理屈としては分からなくも無いんだし、一説にはハイブリッドは全く使っていなかったのではないかとも言われている(ハイブリッドの出力を前輪に出すか後輪に出すかも決めかねていたみたい)訳で、これでオシマイなのは勿体ない気が。
何より、色んなタイプのマシンがコース上でチャンチャンバラバラするの、面白いじゃないですか。




で、そのプロモ/本気のバランスで言えば、俺にとって、実は一番「訳が分からない」バランスなのがトヨタなのよな。


や、なんで、どこからどう見ても「本気モード」の参戦なのに、何時まで経っても「2台体制」なのコレ。
今のルマンて、

  • 1台目:限界ギリギリでとにかく突っ走る。
  • 2台目:1台目のサポ。何かあれば、すぐ様1台目に取って代わって順位を確保する。
  • 3台目:保険。着実に走れるペースを保ち、もし上の2台が他チームとのバトルで共倒れしたときに順位を確保する。

って役割分担だと思うのよね、大雑把に言うと。リスク分散しつつ心置きなく優勝を目指す為の布陣、みたいな。


なのに頑なに2台で参戦するトヨタの意図はナンなんだ、と。去年、「もう一台あれば…」とは思わなかったのか、と。
今年のターゲット設定を『レースモードでのラップタイムを1秒短縮』ってのもどうにも甘い気がするので、今年は去年の車の継続が事前に決まっていて、ソレに合わせてターゲット設定してるみたいな。台数にしても「勝つ為の台数」ではなく、事前に2台って決まってるから3台にはしない、なんつー思考経路なんじゃないかと俺なんかは邪推/妄想してしまいますなぁ。




あ、あと、ノーズを吹っ飛ばすほど大破しても、ものの2、3分で復帰するワークスカー、っても(最近は例年の如くだけど)見物だったね。
まるで各ワークスともデモンストレーションしたいが為の仕込みじゃね?なんて趣味の悪い冗談を思いつく位にアウディトヨタ、ポルシェの3ワークスは車体壊していましたな。
まぁ、トヨタは2次的な事故でぶつけたテールの当たり所が悪かったのか十数分くらい掛かっていたけど、フロントセクションはどれも、ボルトオンで直ってたみたいだからなぁ。
ポルシェなんか、フロントライトが点けっぱなしな所、そのままノーズを外す→新品のノーズを被せると何事も無かったようにライトが点く、という芸当まで拝む事に。
Fセクションやコネクタの工作精度の高さ、一発で嵌るパーツの剛性、そして何より、「レース戦略の一環として」Fサスを守るクラッシャブル・ストラクチャを設計に取り込んでいる、と。その発想が凄いね、コレ。




やー、今更だけど、Gr.C辺りの時代とは全然違って、隔世の感がありますな。

*1:ここら辺、いかにも日本のメーカーだなぁ、と。